詩人:千波 一也
雪のなかにあらわれる
物語
色もなく
声もなく
ただ
ただ
素直な物語
わたしの指に
たとえ消えてしまっても
物語までは
なくならない
それが
雪
誰かの灯りに
彩られたとしても
物語は
かわらない
それが
雪
辿り着いた地面から
ふたたび
そらへと
流れはじめても
物語は
まよわない
それが
雪
わたしの
そとに降り積もる
物語は
わたしの
うちにも降り積もる
居場所を告げず
しるしを告げず
ただ
ただ
しずかに
物語であることを遂行して
いつか、
やがて、と
わたしを
揺らす
2014/03/22 (Sat)