詩人:望月 ゆき
昔の彼女にもらった
シベリアンハスキーのぬいぐるみに
つい なまえをつけちゃったんだよ
そのせいで
今もそれは ぼくの実家で生きている
そんな事情は知らない
ぼくの家族に守られれながら
ピアノの上に座っている
昔の彼女の何もかもを
いとも簡単に処分できたのに
シベリアンハスキーだけは
生きつづけてるんだ
それから ぼくは
ヒト以外には
なまえで呼ぶことは やめた
すべてのものを
客観的に
遠巻きに見守る決心で
だから ぼくは
心底 ぞっとしたんだ
今 ぼくの部屋に
たったひとつあるぬいぐるみを
きみが 手にとって
「モモちゃん」なんて呼んだときにはね
「くま」にしとけよ