詩人:トケルネコ
この目を欲する犬たちに
少しだけ胸をさらけだし
くるぶしの傷や
うなじの黒子を触らせる
日中
僕は花壇に寝そべって
それぞれの行き交う顔やカバン
尖ったヒールや丸いソールに
黄色い唾液を延ばす…
微熱
寝小便
母の舌
母のパンケーキ
母の産毛
微熱
熟み崩れる崖の家
真冬の潮に呑まれる窓という窓
熱源は遥か、風の峰
やさしい言葉に隠れた自傷癖を誰も心配などしない
浅ましい犬の分娩
産まれる蹄のある蛙たち
鼻の奥の痺れ
風が鳴る
夜中
止まらない耳鳴りに
僕は逆立ちした坂道で
キウィを皮ごと頬張る
零れる酸性の水