詩人:剛田奇作
住み慣れた部屋
むやみに壊れたりしない安全なベランダ
一円の狂いなく家賃を引き落とす銀行
何万回となく正しい金額を請求するレジスター
胡散臭いほど華やかなショッピングモール
舗装された道路
美しい公園
そんなことが、
偽りでも、平等で平和な世界をつくるために
とても重要らしいのだ
無力な私は、これらの創造物の一欠けらさえも
加担したことはないのに
瞼にうつる、機能化された世界の輝き
この街に馴染んでいるとされている私
小さなパチンコ屋の、景品管理と在庫確認も
満足にできない私が
いつしかこの奇妙な
無数の歯車の一部になっていて
その無能ささえも、誰かの想定内の出来事で
私の存在自体が
安全極まりない想定内の産物で
名前も思い出せない
古いパンクバンドの歌詞を
擦り切れた青春チックな感じにアレンジ
誰の胸にも響かない旋律も
枯れた空には、
似合うかも知れない