詩人:まとりょ〜鹿
明日私はこの家を出ます。
『他に夕飯何食べたいんだ?』
テーブルには溢れかえるような父の料理。
父はいつもより少し優しくて
それが余計切なくて泣けてきた。
寂しそうに父は酒を飲んで
昔を懐かしむように話していた。
『何も明日から私が変わる訳じゃないのよ』
私は父に笑いかけた。
『いや、変わっちまうんだよ。
お前は俺の娘から、母親になるんだから…。』
庭に咲いた夕顔と
伸びきった蔓。
時間は誰にでも早く流れた。
ヨチヨチ歩きの
泣き虫だった末っ子の私は
明日から妻になり、そして母親になります。
照れて父は私に挨拶なんてさせてくれなかったけど
玄関を出る時に言わせてね。
『行ってきます。ありがとう。』