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詩人:剛田奇作
なんとなく買った新発売のブルーの豆電球は
彼女の部屋に、意外によく似合った
裸足の足をベッドの中で擦り合わせながら
見上げる青いランプ
深海を漂う、
一人ぼっちのクラゲみたいに頼りないブルー
狭い部屋を
ひそやかに浮かび上がらせる
開けっ放しのドアの向こう
開けっ放しのピアノ
貼りっ放しの古い映画のポスター
黒い紙面にブルーが反射して
何かを映し出そうとしているようだった
首の角度を変えると消えてしまう
ブルーの映像
透き通る残像
それは
グランドキャニオンみたいな崖にも
清らかな夜の入り江にも
静かに躍動するアクアリウムにも
見えた
お酒は、少しも飲めないけれど
碧いカクテルがここにあれば
どんなに素敵だろうかと
彼女は思った