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詩人:トケルネコ
遠い形式が僕を狂わす
罪のサザンカは正直者に咲くから
逸る影もない海峡に 拡散と零れる情景達
一人 隣 双つ 波に運ばれる月精
火葬場の木蓮が静かに命を焦がしている
音も無い空へ
指先の呼吸で
偽りを知ることは 何を許すことなのか
抽き出しのアルバムに君を訪ねる
海を知る
夏を知る
ヒトイキレの熱を知り
悲しみを知らなかった僕らは 水門の木の葉をただ眺めていた
あの日の声を聴く
犠牲の太陽が沈むままに
君は星を拾った
底からは水が湧いている
あの物語はもう映らないまま
愛しいと言葉にすることで 何が過ぎ去ったのか
正しい報いしか求めなかった僕らは
せせらぎの音にすら 声を失う