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詩人:ヒギシ
揺れる手を視界の隅に
見つけたのは何時だったか
向かいの窓の黒猫の瞳が
私の眼を離さなかったのに
色鮮やかな花びらが
血の中に混ざり込んだのだ
ふわり風を掴むかのような
その手が魔法をかけていた
迷路のような煉瓦の町を
走り抜けるあなたは
狭くなった青い空を
見上げる事があるだろうか
黒猫は行ってしまった
カーテンに隙間を作って
瞑っていた金色の瞳が
ほの暗い世界に灯される
私は曇った窓を拭いて
まばゆい光を誘い込もう
白い手にきっと似合う
花を育てて贈るため
額縁のような煉瓦の町を
走り抜けるあなたが
切り取られた青い空を
見上げることがあるのなら
窓から溢れるブーゲンビリアが
それを美しく飾り立てる
あなたの心に花が咲くと良い
私に花弁が吹き抜けたように