詩人:乙
鳴りやまないベルが煩わしいから、受話器をあげた。会話したかったわけじゃあない。……万全な人間関係を築くには、交流が不可欠だと、そう思っているので。厄介なことを明日に持ち込む行為は不必要だ。困ったときに相談する相手は決まっていて、誰それの陰口は誰それへ、そうやって誰からも反感を買わずに生きてゆくシステム。……万全など有り得ないと知っていても、電話線のように、たった一本の繋がりだからこそ、断ち切ってしまうことが怖いわけだな。喧しいベルがまた鳴りだす。