詩人:黒夢
大きな音がして、ぼんやりと顔を上げた。
ドラマで見るように、水色の傘が宙を舞った。
それにあわせて、ゆっくりと、本当にゆっくりと
実際は一瞬なんだろうけれど
人の身体も宙を舞った。
心臓の音が、自分にもよく聞こえて。
『コワイ』
考えるよりも先に、僕は事故現場を通り去った。
何度も何度も
宙を舞う傘と、人の身体が、頭の中で再生されて。
救急車を呼ぶべきだった?
人を呼ぶべきだった?
それよりあの人は無事だった?
『ボクハナニヲスベキダッタ?』
僕は僕が大嫌い。
判断力のない自分が大嫌い。
他人任せになる自分が大嫌い。
『ナニモデキナイボクガ、ダイキライ』
また頭の中で、あの日の出来事が再生される。
こうなることが分かっていたら
別の道を歩いていたのに。
そんなことを考える自分が
世界で一番、大嫌い。