詩人:遥 カズナ
女は雪の結晶のよう
男は抜け落ちた鳥の羽のよう
もう戻らない過去は
少女が胸に抱いた花束のよう
まだ見ぬ未来は
少年の瞳に映った高い木の黄金虫のよう
僕は扉の鍵を外す
彼女は目を閉じる
台所の湯気の香りは
窓から夕暮れの玄関先へと流れだし
帰る家がある幸せを
通りすがる誰にでもやさしく教えてくれる
「ただいま」
「おかえりなさい」
守ろうとするほど失うのに諦めてしまえば、いつのまにか寄り添っていて
きどってみせても
何かを落とせば格好がつかないし
だらしなくふざけてみせても
結局はみっともなくて
わかり合う意味が
ぼやけてしまう
恋愛詩は書きたくない
君以外だったから
あきらめてこれたのかもしれない
「夕食はなに」
「揚げ出し豆腐とサラダ」
「うん、ありがとう」
「お疲れ様」
「うん」
、