詩人:もとり
小さな彼女は視線を落とし
赤く染まった輪郭を撫でながら
届かぬ言葉を紡いでいく
結末がいつも幸せなんて
一体誰が決めたっていうのかしら
シンデレラの硝子の靴は壊れてしまった
眠れる森の美女は誰にも知られず朽ちてゆき
白雪姫は毒に侵され息絶えて
人魚姫は愛したが故に泡沫の様に溶けていく
現実は醜く残酷で
夢だけでも見ていたいだなんて
可笑しな話でしょう
愛しい貴方はもう居ない
在るのは置き去りにされた私と残骸
愛でる様に指を滑らせ
静かに彼女は別れを告げる
安らかにと願いながら
捧げる歪んだ鎮魂歌