詩人:浮浪霊
綺麗な、傷だね。私にも手首の切り方を、教えてくれない?言い終るか終らないかのうちに、酷く好い音がして、左頬に痛みが走った。彼女は私を張ってなお、濁った怒りの眼差しでしばらく私を睨みつけ、帰る、と一言呟くと、黄昏る教室を後にした。ぼんやりと取り残される私。後ろ手に隠したチョコレート。こうして私の十七歳のバレンタインは終った。