詩人:朱雀
――三千世界の烏を殺し
主と朝寝がしてみたい――
寝物語の睦言に
誰がうとたか漫歌(そぞろうた)
熊野の牛王(ごおう)を裏返し
誓紙の徴(しる)す心底を
戯(たわむ)れごとと
笑み曲ぐ君様
郭(くるわ)の網が絡みつく
大門超えた恋所(こいどころ)
現事(うつつごと)と知りながら
八咫(やあた)の烏に願掛けりゃ
扶桑の枝で かあと鳴き
血反吐を吐いて那落に落ちる
破約の責めを鏡に映す
洒落のわからぬ明鴉(あけがらす)
慈鳥と呼ぶか
阿呆烏(あほうがらす)と罵ろか
ほんに苦界は烏兎怱怱(うとそうそう)
誰か烏の雌雄を知らん
※『三千世界の烏を殺し 主と朝寝がしてみたい』は高杉晋作が作った都々逸です。