詩人:剛田奇作
極寒の海から引きずり出された僕は
会議室のテーブルについていた
君、言いたい事はちゃんと言いたまえ
そんな物騒な武器は早く棄ててしまいなさい
ナイフは手で持てば、目の前の肉体を切り裂く武器、口で持てば無限の力を秘める芸術
寒いとは、どういうことか?
いい加減、説明をしてくれないか?
仕立ての良い背広の男たちが口々に言う
会議室にメラメラと燃える暖炉が次第に僕の唇を溶かしていく
僕は、その日
生まれて初めて声を発した
知っているただ一つの言葉を
「助けて」
途端に
背広の男たちは、次々に神話上の動物になり
僕の体に入ってきた
暖炉が消えた後もずっと、僕は温かかった
寒さを忘れるほどに
温かかった