詩人:トケルネコ
紡ぐ事も罔いだろう
拡げる事も 担ぐ事も罔いだろう
ただ射つ事だけに証明されるだろう
上澄みだけの本性は 夕室の隅に透明に固まっている
手懐けた諸刃の弦は義指を絡め取り
その矢を長く長く燃やし
暗黒の地図を斜めに過るだろう
咎めの無い窮屈
人目の無い盗掘
まとまりの無い乾燥機の擬音は
その存在を彼岸の触媒に差し出すだろう
あざといコーデックの花が ただ一輪の森を焼く
生まれを秘めず その名を刻む ‐遺髪の賢者‐
私がただ悦びを知るために
今日を限る者 明日を見限る手
三面鏡に挟まる緘黙の仮面達
誰かが葉叢から観ている
誰もがそれを視ている
異空