詩人:地獄椅子
聞いて下さい。
みんな野蛮なのです。
如何程の善意を捧げたっても、彼らは無碍に却下するのです。
もし僕に、揺るがざる信念の一つでもあれば、彼らに取って代わって力強く正義を行使するでしょうに。
残念なことに僕にはそれがありません。
聞いて下さい。
みんな野蛮なのです。
幾ら等身大の愛を謳っても、彼らは一向に振り向いてくれません。
どんなに身を削った代物でも、肝心要のカンナが錆びてたんじゃ、哀れだろうよ。
本当の悲劇を、僕は知りません。
ただ繰り返しのような毎日をのうのうと生きてるだけです。
夢も張り合いも、年月が奪い去りました。
誰かの微笑みの中で、せめて倒れないようにしてるだけ。
現実はリヴァイアサンのようなもの。
捕らえ難く、奇妙な生きものの一形態であります。
こんな辺鄙な場所で僕は、原因不明の気持ち悪さに襲われることがあります。
その野蛮な見えざる暴力に屈伏しそうになります。
飛び込んできたノイズ。
どうせ脱出不可能なんだろう?
飼い殺したナイトメアの悲鳴。
バクがいるなら食べてくれ。
手元に残った残骸。
灰になった悲しみ。
美しくもなく醜くもなく、延々と続くアスファルトの砂漠。
見守るだけの月。
幾星霜、紡いだか忘れました。
しばしば憎しみさえ入り混じり。
朽ち果てた遺蹟のような、絵空事。
紙の上に。文字の中に。
反芻する歴史に、引き裂かれながら。
破り棄てた抽象的精神世界のマーブル模様。
グルグル渦巻いて、昇華するのを待つこと数年。
矢の如き光陰は無情。
那由多の彼方に馳せてみても、未だ光は遠し。
闇を寵愛する偏屈な孤児の夢想。
神話と破滅のデジャ・ヴ。
欲望と絶望のメスでオペ後の経過は波乱そのもの。
いい加減に生きていくのも、それはそれでアリかもしれんが、それでは彼らと変わらない。
ああおぞましや。
ああおぞましや。
くれぐれも僕に危害を加えないでくれ。
聞く耳持たぬ野蛮な人達。
その群れから一線を画する者の矜持を胸に、笑う力を守るんだ。
ああこの誓いをば、霧散せぬことを、真に!