ホーム > 詩人の部屋 > 地獄椅子の部屋 > 黒の誓い

地獄椅子の部屋


[23] 黒の誓い
詩人:地獄椅子 [投票][編集]

聞いて下さい。
みんな野蛮なのです。
如何程の善意を捧げたっても、彼らは無碍に却下するのです。
もし僕に、揺るがざる信念の一つでもあれば、彼らに取って代わって力強く正義を行使するでしょうに。
残念なことに僕にはそれがありません。

聞いて下さい。
みんな野蛮なのです。
幾ら等身大の愛を謳っても、彼らは一向に振り向いてくれません。
どんなに身を削った代物でも、肝心要のカンナが錆びてたんじゃ、哀れだろうよ。

本当の悲劇を、僕は知りません。
ただ繰り返しのような毎日をのうのうと生きてるだけです。
夢も張り合いも、年月が奪い去りました。
誰かの微笑みの中で、せめて倒れないようにしてるだけ。
現実はリヴァイアサンのようなもの。
捕らえ難く、奇妙な生きものの一形態であります。
こんな辺鄙な場所で僕は、原因不明の気持ち悪さに襲われることがあります。
その野蛮な見えざる暴力に屈伏しそうになります。

飛び込んできたノイズ。
どうせ脱出不可能なんだろう?
飼い殺したナイトメアの悲鳴。
バクがいるなら食べてくれ。

手元に残った残骸。
灰になった悲しみ。
美しくもなく醜くもなく、延々と続くアスファルトの砂漠。
見守るだけの月。

幾星霜、紡いだか忘れました。
しばしば憎しみさえ入り混じり。
朽ち果てた遺蹟のような、絵空事。
紙の上に。文字の中に。
反芻する歴史に、引き裂かれながら。
破り棄てた抽象的精神世界のマーブル模様。
グルグル渦巻いて、昇華するのを待つこと数年。
矢の如き光陰は無情。
那由多の彼方に馳せてみても、未だ光は遠し。


闇を寵愛する偏屈な孤児の夢想。
神話と破滅のデジャ・ヴ。
欲望と絶望のメスでオペ後の経過は波乱そのもの。
いい加減に生きていくのも、それはそれでアリかもしれんが、それでは彼らと変わらない。

ああおぞましや。
ああおぞましや。

くれぐれも僕に危害を加えないでくれ。
聞く耳持たぬ野蛮な人達。
その群れから一線を画する者の矜持を胸に、笑う力を守るんだ。

ああこの誓いをば、霧散せぬことを、真に!

2006/01/09 (Mon)

前頁] [地獄椅子の部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -