詩人:山崎 登重雄
彷徨う螢たちよ
あわい明滅を繰り返して
覚束ない飛跡で漂う
ふわふわとゆらゆらと
甘い水に誘われて
オリジナルの光を止めちゃいけない
今は苦い水でも
必ずもっと光ゆく源のこの瞬間を
ちからいっぱい飛ぶんだ
なぁ 螢
ポケットの中の辞書を覗いてごらん
渡・歩たる・穂たる・帆たる…
およそ使わない語群だって今を未来を指してる
絶対に諦めないでおくれ
きっともっとずっと光ってる
君たちの姿をこれからも見せておくれよ
こんなに進んだ世の中ですら
螢の光を解明できてないんだ
稀有のきらめきはムシケラなんかじゃない
甘い水に誘われて
暗闇の中で独りで狩られたりしないで
君たちを見守っている瞳や手のひらを信じてよ
みんな小さくたって光ってるんだぜ