詩人:風凛
俺が描いた絵が、
演奏会のポスターに採用された。
二人の子供が一冊の大きな本を見てる絵だ。
俺はそのポスターの見本を持って帰り、両親に見せた。
それから数時間。
俺は両親のいる部屋の前を通りかかって、
ドアの影から聞いた。聞いてしまった。
『あの子は自分が馬鹿だって事に気づかないのよ。
あんなもの小中学生でも描けるわ。』
母が、こう言っていた。
『あんな絵描いてるようじゃ受験も無理ね。』
父は母の前では無口だった。
『あんた、本当にあんな絵が良いと思うの?』
[思ってるよ!!!]
父が、珍しく語気を強めた。
俺はドアの影がやたらうれしかった。
握りしめた手が震え、涙がどっと盛り上がった。
ありがとう親父。
もし、あんたにまで否定されてたら、俺は長いこと立ち直れなかったよ。
お袋、自分を一度でも馬鹿だって思ったら、そこで止まっちまうじゃんか。伸びるものも伸びないじゃんか。
俺はもっと上手くなりたい、お袋の言葉に負けないくらいに。
きっといつか、見返してやるからな。