詩人:矢井 結緒
その妖しく儚い光は
命の微熱を宿した輝き
この痛みも忘却の網に
絡め取られていつしか
失われてゆくのでしょう
握り潰した記憶たちが
掌を開くと
トパーズ色の飛沫を
散らして滲むのです
あの夏の初めての夜
開け放した窓から
ふわりと迷い込んだ蛍
同じく明滅したのは
ふたりの鼓動
指の隙間から
零れ落ちる時の砂
刻み付けた
いくつもの場面は
時空の海に流れ去って
闇に隠れて
姿を見失ってしまうけど
光はあなたの在処を
教えてくれる
あの夜の蛍は
きっと空へ昇って
わたしを見守って
いるのでしょう?
あなたの傍で