詩人:ジョーブ
戦火の中には涙がみえずに、怒りよりも不安が渦巻いていた。
足は走るよりも無意識に敵をさがす、
飛来した瓦礫にうもれている足元なんて気にしない、
ただただ人間をさがしていた。
見たら撃つ、そう脳がもう気付いていたんだ。
花はない水もない食糧なんてない、神はいない。
覚えているよ。太陽が消え月が照らすんだと、静かに敵を狙えと言う。
口からは唾液が知らず知らずに失われ、声が出せないと一瞬に呼吸が小さくなる。
一呼吸(ひとこきゅう)の合間がない、『父と母よ』と叫びよぎるのは、自分の死を自覚したからなのか、銃口に瞳がゆく、
1、2、3、心の中で前へと進むタイミングは友を願う。どうか死なないでくれ、我が友よ守りたまえ。
最後に覚えている事は、小さな視覚が妻と子の面影を見せたこと、
私の墓は静かな場所にしてあるみたいだ。