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[18749] たまご

詩人:望月 ゆき

わるいことがあった日は
たまごを100個
ゆでたそれの殻を
むく
そうなさい、と
むかし誰かに言われたのだ
けれど
誰だったかは
わすれた

殻をむくのは
夜じゃなくっちゃいけない
蛍光灯の下
なんてはもってのほかだ
まっくらでなくっちゃ
いけない
そんなふうにも誰かに言われたのだ

誰だったかは
わすれた

もしもまちがって
あかるい光の下で
殻をむいたりなんかすると
真っ白いそのカケラが
きらきらとかがやくので
思わず
ふりかけ振って食べちゃったり
ネックレスにして首にかけちゃったり
なんかしたら
それはそれは
たいへんなことになる

まっくらじゃなくっちゃ
いけないよ

こんこんと言っていた
わすれたと思っていた誰かは
わすれたんじゃなくて
もういないだけ

そんなことをしてると
だんだん
このまま朝がやってこない
のではないか
などと思う
わるい日が
もっとわるい日になってく
ように思う
そりゃあそうだろう
なにしろまっくらなのだし
なにしろたまごなのだから

そんなときは
もっともっともっともっと
たまごの殻をむきなさい

誰かは言った
だから、むく
とにかく、むく
ひたすら、むく
むく
むく

むいて
むいて
むいて
おなかがすいたなら
むいたたまごを食べなさい

誰かは言った




真ん中から、太陽が

2004/10/21 (Thu)
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