詩人:良い席
何にも無いグレーな空間が在る。そこに先ず俺が居る。すると俺と面と向かって親が二人立っている。表情が無く、いや顔面が無い。輪郭は有るがパーツが無い。すっと左の男が出を差し伸べた。右手が俺の眼前へ迫るとふっと消えた。残った一人は微動だにせず顔面の無い輪郭が此方を見ている様だ。するとそれもまたふっと消えた。そこには最早何も無く、延々とグレーな空間が妨げるものも無く只、そこに在るという虚構の実感が確かに有った。