詩人:黒
嫌われた本の話
古い本屋の本棚の上
おそらく人間にしたら女であるその本
内容はきっといろんな意味で悲惨だ
前の持ち主の手を離れさまよう
彼女は棚の中一番の嫌われ者
後ろ指を刺されながら新たな持ち主を探す
宗教的な表紙がさらけ出されたその時
彼女を手に取ったのは俺だったのか
俺じゃなかったのか
彼女が棚から抜き去られるその時
飛ばされる罵声の数々
生きた本からも死んだ本達からも
彼女はそれでも棚から離れるのを拒んだ
黒だったか白だったか
俺だったのか他人だったのか
彼女が新たな持ち主の手に渡ったたのかどうかはわからない
果たして一度でも読まれた事はあるのだろうか
彼女がはっきり拒んだ事だけは覚えている
赤文字のタイトルに惹かれた
それは俺だったのか
他人だったのか
虚無だったのか
あの本の行方も新たな持ち主も誰も知らない
果たして一度でも読まれた事はあるのだろうか
嫌われた本の話これでおしまい