詩人:あいる
触れれば煩わしくて
離れればもの足らなくて
満たされることなんてなくて
足りないくらいが丁度よくて
君と夏の終わりにしたキスは
線香花火の火種が水に着地したときと同じ音がした
濡れれば煩わしくて
渇けばもの足らなくて
癒されることなんかなくて
何が足りないのか
年々その輪郭は明確になっていく
弾むような雲も
下手くそな水切りも
エコーのかかりすぎたマイクも
蚊に刺されたところにつけた十字の印も
全部が薄められていく夕景
いま命をまっとうして
投げたタバコが水に着地するときには
君と夏の終わりにしたキスの音がするんだろう