詩人:都森 善太
あれは風鈴蝉でありました
蚊殺線香のぐるぐる
紫の煙と染み付いた溜め息
吸い込んだマンションの壁紙
人に限りなく似せようと
足ばかり速くなった
二足歩行のロボットが
踏み潰して歩いた
あれは風鈴蝉でありました
ナツカシイナ
風鈴蝉しぐれなんていう
オサレな言葉も
昔はあったそうで
オマセなお子さん達は
一過夏を命がけで
恋に狂ったようで
脱け殻ばかり集めて燃やして
コトシハアツイナァ
潰れた駄菓子屋の前で
百円玉を握り締め見上げた
あれは風鈴蝉でありました
2007/08/20 (Mon)