詩人:フィリップ
新宿の夜を
地下鉄で走る
車内は静寂であり
喧騒ですらあり
ただ
僕には余りに広い
隣に座った老紳士が広げた新聞を
横目でチラリと見てみた
一面記事になっていたのは
ある殺人事件の事
遠い国の事でも
昼時のドラマでもない
今僕がいる場所からほんの数ミリ
角度がズレた地図上の街での話
そういう事に
僕は戦慄を覚えた
パンパンとした僕の心を
汽笛がつつく
山手線
辿り着いたホームの空気は
パンパンに膨れ上がったペットボトルのような重さを
冷たさと共に
僕になすりつけた
2008/05/22 (Thu)