詩人:望月 ゆき
呪文をおしえてください
あのひとまで、とどくような
たとえ とどかなくてもいいとさえ
思えるような
わたしを消してしまえるほどの
それは
風にも似て
耳もとをとおに過ぎてから気づく
聴こえた
と思ったそれは
足音、で
あのひとにとどくようなものでは
とうていなかった
足音はとどかない
足音は姿を見せない
足音は、だれの
足あとなら、よかったの
目に見えることだけを現実というのなら
わたし(わたしたち)はどこで存在しているのだろう
たしかにここにいるのだと
どれだけ叫んだら
手に触れるものだけを信じるというのなら
わたしはもう
呪文をさがすことなく
空と足音のあいだを、ゆく
風になって
今から、そこへ