詩人:たかし ふゆ
モーニングペーパーを開きながら
ラウンジに揺蕩う
コロンビアの苦い香りが鼻をつつくのを感じている
海の向こうでは亡国者が暗殺され
直ぐ近くでは吉祥寺が自由が丘に迫られ
目の前では、冬が眼をこすりながら横たわっている
気配はいつもゆっくりと浸透する
たとえば
鳥の鳴き声のトーンだとか
ゲストハウスに集う外国人旅行者だとか
ただ
いまだ姿も輪郭もハッキリと見えない
世界が塗り変わっていく時は
香りだけがする
満員電車の車窓
17才
ユウコさんの前髪
揺れ、少しずつ変容するものを
指先の感触だけで感じている