詩人:剛田奇作
小学校の下駄箱の上に
首吊り死体があった
見たくなくて
いそいそ逃げた
校門で母さんに電話する
携帯画面にはクマだらけで、血走った眼の
のび太のお母さんがいた
怖い、母さん
天気が悪くて
迎えに来た母さんは 用水路の濁流に飲み込まれて消えていった
お母さんの乗ってきた戦闘機を操縦し
なんとか家にたどり着く
居間には
またあの首吊り死体がぶら下がって
隅に置かれた雛人形が赤い眼で私を見ている
父さんが五歳で買ってくれた
最高級の雛人形
父さんは流動食を食べながら蛍光灯を見ている