詩人:剛田奇作
その悲しみに名前は無く
その傷に名前はない
題名が無くても
それは美しい、歌
声にならない祈りのような
生まれゆく者たちと
彼らの闘う理由
激痛の中でみた
夜明けは
青白いくっきりとした
建物の輪郭
動き出す生き物の影
息を飲むほど幻想的な光景だった
その感覚に名前をつけられないのは
心が生きている証
その身体で育むのは
時間でも過去でもなく
永遠の中に留まる
一瞬のあたたかい血潮
強固な記憶
美しい 美しい 美しい
愛を知らなかった者たちが
其れを、
知るということ