詩人:重夏
薄い蒼の闇に咲く淡く白い月
小さく輝きを放つ星の欠片たち
光が闇に消えゆく様を
闇が光に溶けゆく様を
初めて眼にした その春夜
春風が優しく君を撫ぜ
柔らかな色を放ちながら
君は降る
ひと時の切なさが私を包み込み
酔い痴れた 美しきその姿に
酔い痴れた 息を呑み 君の最期に
ギシリと軋むベンチに腰を掛け
見つめた先に浮かび上がるは
霞がかった桜色 つまりは君のこと
”私をわすれないで・・・”と
聞こえた気がした
いや あの時 確かに受け取ったよ
君の声
触れ合う空気が
ひどく甘く薫っていた
ある春の夜の情景