詩人:たかし ふゆ
何も知らないようにしていた
知識は邪魔にはならない
しかし
知らないほうがいいことが多すぎる
八重洲口から真っ直ぐ歩くと
本当は、きっと昭和通りをまたがないのかもしれない
世界は変化し続ける
残酷な結果ばかりを見せる
逃げ場なしの万華鏡
グルグルぐるぐる
今しがたすれ違った知らない誰か
いつの日か
知らない人ではなくなるような
代償に、愛のすべてを分かち合った大切な誰かを、忘却へと送る
知らず知らずの間に
世界は廻る
やがて午後が来る
別れた後の静寂と
おぼろ気な彼女の残像
その声の記憶だけで、感じ続ける世界