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[57763] 守りたくて、守れなくて

詩人:あきら

手の届くものは全部、なにもかも守りたかった。
誰にも悲しい想いをさせたくなかった。
でも、守りたくて精一杯伸ばした手は、逆に守りたかったものを、守らなくちゃいけないものを傷つけた。
僕は怖くなった。
自分自身を憎んだ。
手を広げる勇気もなくなった。
広げるほどの手も自分にはないことに気がついた。
自分の手は思ってたより小さくて、なにもかもこぼれ落ちそうだった。
気がついたときにはなにもかもこぼれ落ちていた。
この手を広げても愛する人を抱きしめることはできない。守ることもできない。そう思って拳を握った。
なにからも逃げたかった。
拳で振り払いたかった。
そう思ってしまう、そんな自分が嫌だった。
そんな自分から逃げたかった。
否定したかった。
その苦しさから逃げたくて、自分の為にもう一度だけと思って拳をほどいて手を広げてみた。
守れるものはまだ少しあった。
もう、絶対離したくなかった。

2005/11/29 (Tue)
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