詩人:丘 光平
うつろに揺れる草むらで
風はひととき、そのつかれた翼を休めていた。
それでも風に言いたいのだ、遅れていた花々は
こんなにも私うつくしく咲いているのよと
あるものは紅潮し、またあるものは満たされた思いで。
それでも風は言いたいのだ、なぜなら彼は
その身に雪をまとい眠り始めた山脈を
やっとの思いで越えて来たのだから。
そしてひととき、遅れていた花々の華やぎ熟れる草むらで
うつろに揺れる風の心は
つかれて休めていたその翼をもの静かに広げて。
残念そうに手を振る花々を
風はひととき、振り返ってはまたきびすを返し
冬の手紙を胸に
うす紅の空を渡り流れて。