詩人:遥 カズナ
波打ち際の
防波堤の隅っこに
トンボがいて
明日には
台風が来るから
風も幾らか
強く吹き始めていて
神様が
手際よく描いた
デッサンみたいな
美しい線のフォルム
強い筆致で刻まれたような6本の足
機敏にくいっと動かした頭には
空も私も映していたであろう黒い目玉が丸く
川面を思わせる透明な羽と
血色の真紅の身体を
風に弄ばされそうになりながら
佇んでいて
命と言うものは
生きてそこにただあるだけで
十分意味があるのだと言う事を
わからせてくれていた
2025/10/11 (Sat)