詩人:剛田奇作
ぼくの好きなものは
すべて君のポケットにつっこんだ
君は受け取らなかったから
君はまっすぐに
遠く、モノクロの
景色を見つめてる
有刺鉄線の向こう側で
灰色の地平線を眺めてる
まばたきすら、しないまま
掠れた声でなんど呼びかけても、
君はポケットの中を見なかった
こっそりと、割れた現実を入れたのに
僕は君の首に巻きついた
錆びた鎖を外そうとした
息をしないまま、君は
「とらなくていいよ」と言った
ばらばらになってしまう前に
はやく、ぼくを殺して
雨が止んだら君はいなくなるだろう
有刺鉄線にからむ
灰色の雨