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剛田奇作の部屋


[421] ポケット
詩人:剛田奇作 [投票][得票][編集]

ぼくの好きなものは

すべて君のポケットにつっこんだ

君は受け取らなかったから

君はまっすぐに

遠く、モノクロの

景色を見つめてる


有刺鉄線の向こう側で

灰色の地平線を眺めてる

まばたきすら、しないまま


掠れた声でなんど呼びかけても、

君はポケットの中を見なかった

こっそりと、割れた現実を入れたのに


僕は君の首に巻きついた

錆びた鎖を外そうとした

息をしないまま、君は

「とらなくていいよ」と言った

ばらばらになってしまう前に

はやく、ぼくを殺して


雨が止んだら君はいなくなるだろう


有刺鉄線にからむ

灰色の雨




2012/05/22 (Tue)

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