詩人:剛田奇作
見る
見つめる
あなたを
見つめる
狭い 四角の 天井
もれた 息
髪を揺らす
鼓動と同じリズムで
波打つ 首すじ
とても とても
かすかに
見る そっと
見つめる
あなたを
ただ そのままに
許された 永い、一瞬に
少しだけ濡れた 瞳
まつげ
まばたき 、 光
見つめる
見て いる
見て いる
私の身体に備わった
二つの 黒い 眼
窓硝子が 光を 招く
青い空の はるか遠くの雲
あの雲より はるか遠く
目の前に 限りなく
あなたが
近くに 側に
もっと
見つめる 見つめる
見つめる
冷たく 高く かがやく 星
暖かい 漆黒の 宇宙
生まれはじめた ものたち
見つめる 見つめる
あなたを
かすかに揺れる 肩
呼吸、 喉
手のひらの、奥の 心臓
見つめる
記憶するためでも 確かめるためでも、
いっさいなく
教えられた 訳でも なく
見つめる
見る
何かを 埋めるように
本当に そっと
大切に 詰めるように
唯 見つめる
永遠と一瞬 が 喧嘩もしないで
あなたの向こうで ゆれる
見つめる
見つめる
ゆれる
伸ばした腕 爪の先
あなたの涙に
微笑みに
近く 深く 届く
一番 奥の あたたかい、場所
見つめつづける
触れるより やさしく
抱くより 熱く
終わらない音楽の
銀色の 音色みたいに