詩人:剛田奇作
会社帰りに 踏みつけた狂気が
むくむくと起き上がって
目があった
夕飯を作ってる最中だった
やるか やられるか それとも 飲み込むか?
いや もう
こうなっては 何もかもが手遅れだ
飲み込んでも 腹を食い破って
出てきて 俺の死体の上を這いずって回るんだろう
野菜炒めの焦げる匂いに反射的に火を止める
0.4秒
「自殺なんて笑えるオチ」は期待しないでくれ
1,2 秒
俺は 猛烈な速さで狂気をつかみ
電子レンジに ブチ込み
800w「強」に設定し スタートを押した
約19秒
1Kのアパートに狂気の「断末魔」が響き渡る
俺は必死で 目を瞑ったまま レンジのドアを押さえ続けた
次第に悪臭と 壮絶な 吐き気で
意識が遠くなり キッチンの床に倒れていた
朦朧とする意識の中で 誰かが俺の手を握るのがわかった