詩人:アルバトロス
僕は今
悲しいのだけれど
それは瞬間を切り取っただけで
仕事には行かなくちゃいけないし
ご飯も食べなきゃいけないし
歯も磨かなきゃいけない
悲しいと思うことを
バカらしいとは思わないけれど
悲しいと思うことに
支配されるのは癪だなとは思う
別に後ろ向きでも良いじゃない
この瞬間に留まることはできないのだから
悲しい、は続かないのだから
塗装の剥げた道路を
空き缶がコロコロと転がっていく
からんからんと
寂しそうな音を立てて
誰にも見向きされずに
空き缶はどこへ行くのだろうね
秋の冷たい風に吹かれて
僕はどこへ行くのだろうね
気がつくと空き缶は見えなくなっていた