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[130012] はねむしの遊歩道

詩人:こうさぎましろ



雨おちる午前
アスファルトの湿ったにおい

とうもろこしが
おくるみに抱かれた赤子に見える

あねもねは露を浴びて
しおらしく、しおれている

夏の歩道に散りばめられた
はんてん模様の落葉

二枚対になった蛾の死骸

踏まないように避けて歩く

天分を全うせよと誰かがいった

右手は握りしめすぎて痺れてしまった

左手に掴んでいる裾をやっと離せたのに

足元を蛾が這い蹲るようにして
横切る

死にかけているの?

立ち止まって見送る

どうして生まれたの?

意図すらもわからない質問が浮かぶ

寂しくしていると
あの人がくれた少し高価な菓子
あれが急に欲しくなった

痺れた手は離すのを怖がっているだけ

もういいよ
もういいのよ?

傘の骨に
雨滴がつたう

右折した車がじりじりと
ゆっくりと横切るワタシを見送る


2008/08/02 (Sat)
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