詩人:しゅんすけ
この町にかつて映画館が五軒と風呂屋が八軒、銀行の出張所が三軒あったと父は言った。
私の幼なじみたちはみなここを離れ、都会に出て働くのが当たり前だと思っていた。
半分はその通りに生きているようだ。
残りの半分は帰ってくる。
今はこの町に映画館も風呂屋もない。銀行の出張所も一軒あるだけ。
誰もが想像するような自然と共に歩み続けた源風景などない。
そこにあるのは文明に憧れ、文明に忘れ去られた傲慢。
未練や哀愁や敗北感。
金に変えたプライドを擦り付ける老人。
無関心を装うよりも、正義感とプライバシーを棄てる方が簡単なのであればここは住みやすいのだろう。
ただどうしてもという方には、都会に住み、土地の歴史になど一部の興味ももたず、風景に勝手に感化される事を是非ともお勧めする。