詩人:猫の影
草いきれが鼻を撫ぜた
何か思い出しかけた
掠れた声が美しい
貴女の面影が風に揺らめく
気のせいかもしれないが
何も知れない
現の世の浮き沈み
それだけなんだろうか
切なくなるのも空々しいので
一応笑ってはみた
楽しい思い出になればいい
か細い指が美しい
貴女の面影が枷に成る可く
木の下には仔猫が寝ているだけだが
かもしれない
誰何の声は遠退いた
それだけだったろう
嗚咽するのも馬鹿馬鹿しいので
一応笑ってはみた
忘れて行ければそれでいい
それがいい…
2010/05/22 (Sat)