詩人:月詠
時間(みらい)を忘れ
子供の頃に戻ってみると
今の私が幼く見えて
あの頃に戻りたくなった
誰ひとり起きていなくて
私だけが起きていると
私は悲しくなって
変わらない空を見上げた
あの頃と同じように輝く
月を見上げた
月光(つきあかり)に
凍えた夜は
星の導きさえ無力に見える
悴んだ両手は
何かを訴えるかの様に
其の光を欲する
其処には明日も
今日も無くて
只 私だけが
見棄てられた骸みたいに
月光に照らされていた
我(わたし)に返り
躯の異変に気付くと
私は直ぐさま
暖まっていない布団に包まった
闇の中には
月光の残像が遺る
冷えた躯に食い込む刃は
骨の髄まで火傷しそうな寒さで
睨んだ此の眸は
そっと瞼を閉じて
暖かくなるのを待った
其処には過去も
未来も無くて
只 月光だけが
見棄てられた骸みたいに
届かぬ声を叫んでいた
月光に遺された現実が
貴方に繋がりますように
貴方に届きますように
私は其れを祈って
今日も眠る。