詩人:咲麻
寒い寒い夕暮れ時
おかえりを告げるチャイムの音
ぐだぐだの宿題
お腹を空かせながら見るアニメの放送
だんだんと近付いて来る車の音
あの独特のスピーカーの声
せがみもらった500円玉を握り締める
まだ小さな手のひら
ブカブカのサンダルを履いて走る
にっこりと微笑み
「オマケだよ」
と、嗄れた声
「ありがとう!!」なんて
遠慮を知らないあの頃の
駆け出す事のないハイヒール
母にせがむ事も無く取り出した財布
上品に強情に
いつの間にか身に付いた遠慮の仕方
「オマケだよ」
微笑みも変わらず嗄れたあの声
「ありがとう」なんて
懐かしくて照れ臭い
小さな声で
世間はまだ
あの頃のままに