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詩人:右色
大切な誰かはあなたでなくても良かった
あなたはただそこに
私の隣に居たというだけで
私に何をしてくれたわけでもない
ただいつも隣にいただけ
話掛けさえしてくれなかった
ただいつも
図書館の隅に座って本を読んでいた
最初は安心だった
あなたはいつも同じ穏やかな雰囲気で読書する
あなたの代わりに観葉植物が置かれても
たぶん私は同じ目で見ていた
それくらいあなたは自然で
私にとっても自然だった
私の最大の失敗は
あなたに軽い気持ちで挨拶をしてしまったことで
あなたの最大の罪は私に挨拶を返したことだ
その瞬間
あなたは私にとって自然ではなくなり
私の大切な人となってしまった
だから
だから
わたしは―――