詩人:猫の影
落ちた恋のことを
いくら考えてみたところで
その吐息はもう確かにあって
畳まれた洗濯物
奏でられる三重奏
空振るバット
世界は不思議とそのまま停止して
触れた感触はざらりとしたまんま
闇の中へ溶けていく
落ちる恋のことを
あれこれ切り貼りしてみたところで
その消息は確かに聞こえていて
洗われた食器
岩に染み入る蝉の声
空を切るバット
世界は平然と世界然としていて
空に手を伸ばしても掴めない
溶け出す闇を掬う
落ちた恋のことを
いくら考えてみたところで
その吐息はもうそこに在って