詩人:番犬
年老いた夫婦が
温かいミルクを飲み干す頃
我が隣人が恋人と
愛の言葉を紡ぐ頃
我が師が生徒に
有り難い説教を述べる頃
裕福な家庭の子供が
やりかけのゲームをリセットする頃
遠くの弱者が死ぬ様を
痩せた大地で死ぬ様を
ブラウン管の外側
国境線の外側から
差別や体制
クーデターやテロル
自動小銃とサーベル
餓えと貧困を
俺はただ静かに
何も言わず
じっと眺めていた
ちっぽけな
ちっぽけな
ちっぽけな
あまりにちっぽけな俺が
ぽつんとそこに立ち尽くしていた
言葉が無力だった
俺はペンを置きたくなった
2006/12/28 (Thu)